第7回研究会 報告


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秋季大会として第7回研究会が開催されました。

まず、中西氏が「陰陽からの眺望:「生循環」に潜在するある視点」と題して、陰陽と生循環的発想の相似についてお話をされました。「気」の運動の中で現れる陰と陽は相対的で、それぞれ極まると反転、運動変化するといった特徴を持ちます。その特徴は以下のような生循環的発想に通じるのではないかとお話しされました。すなわち、(1)価値の絶対性にたいして疑いを持つこと、それによって、安定しているかに見える現状が別視点によれば実は大きな変動(循環)の中にあるのではないかと考えること。(2)流動・崩壊が安定・存続を保障していると見ること。また、このような陰陽的発想は、イブン・アラビー(d.1240)の「存在一性論」にも見受けられるということ、したがって中国ムスリムは「存在一性論」を陰陽思想によって理解していたかもしれないということが、論じられました。

続いて、齊藤氏が「未来の生命科学と生循環」と題して、iPS細胞研究の現状と課題について話題提供されました。iPS細胞は(1)無限に増やすことができる、(2)ほとんどの細胞に変化(分化)するという特徴を持ち、現在、網膜疾患やパーキンソン病治療にむけた研究が国内外で精力的に進められていますが、細胞分化のメカニズムについては謎が多いままです。齊藤氏はiPS細胞を含む幹細胞から生じる細胞の分化と生循環の考え方を絡め、細胞が動的にその状態を変化させることで、細胞社会を形成している可能性や、がん細胞との共生の可能性についてお話しされました。また細胞の循環についての理解を深めることで、老化のメカニズムや、細胞の進化や生命の起源を明らかにしていく研究につなげていけるのではないかとお話しされました。

陰陽とiPS細胞、一見して何の接点もなく見えますが、当日は「生循環」という概念を媒介に用いることによって、活発なディスカッションが行われました。