第3回研究会 報告


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第3回研究会は、最初に中西氏が「『生循環』を促す『永生』‐活ける死者、有意義な死」と題して、古代・中世・近世の時間軸と中国・日本・イスラム世界などの空間軸を行き来しながら、様々な「不老不死」のあり方やそれが次世代や歴史展開に及ぼした影響を論じました。まず、永遠の生を生きることへの憧れと戒めがあることで、逆説的に人は自然な生死の循環を受容できるようになるということが主張されました。次いで、様々な「不老不死」のあり方として、たとえば、預言者や聖者は、死後も、残された者の結束の核として、彼らの記憶の中で「永遠に生きる」ことが指摘されました。また、伝統中国の考え方では、「気」が凝集することで人や物となり、人が死ぬとその「気」は散じるが、子(子孫)と父(祖先)は同「気」でつながって生命を永続させていくとみなされたことなどが紹介されました。

 

このような歴史・思想の話を聞いている途中、生命科学系の研究者から「今、不老不死になれる薬があったとしたら、みんなは飲む?」という問いかけがありました。何を突然言い出すのかと思いきや、現在のゲノム編集などの技術は、身体を構成している細胞を入れ替えることができるようになるかもしれない域まで達しているそうです。まさに「健やかに死ねなくなる(第2回研究会)」現実が来るかもしれなく、これと今の不老不死の話が結びついて聞きたくなったとのことでした。現代の最先端技術と古代の思想がクロスした瞬間でした。

 

続いて前多氏から「自己複製と循環の合成生物学」と題し、レゴブロックみたいに細胞を積み上げて生物の機能を模倣するようなネットワークや反応系を作る合成生物学のお話がありました。合成生物学では、遺伝子の制御配列を人工的に組み合わせることで実際の生物にはない遺伝子回路を作ることができます。さらに、単純な原理に基づいているにもかかわらず、外から栄養素を取り込んで動いたり分裂・複製したりするなど複雑な動きをする人工細胞もどきも作れます。人工細胞が複製・増殖するプロセスにおいて、細胞が「一度死ぬ」というプロセスを入れられると、死んだ細胞が分解され次の世代の「エサ」となる、つまり「循環する」ようなダイナミクスのあるモデルが作れるのではないかという議論がありました。また細胞には分裂しない長寿命のものもあれば、短期間で分裂・増殖を繰り返す細胞もあります。同じ遺伝情報を持ちながら増殖の方法が異なることを、一つのメカニズムで理解できるかどうかということに興味がある、とのお話でした。

 

2つの発表を聞いて、何を持って「安定」とみなすのかの解釈が、2通りあるように感じました。「不老不死」や「ずっととどまっている細胞」も、安定しています。一方で、「次世代へ活かす、つながる死」と「増殖・分裂の果てに他の細胞の資源となる細胞」も、大きな系(サイクル)の中でみれば安定しているといえます。

 

第3回研究会ともなると以前の研究会で生まれた概念を参照するなど、少しずつ共有しているものが増えているのを実感します。毎回参加いただいている方たちを、「サポーター」としてメンバーリストに加えさせていただきました。