第12回研究会 報告


12回研究会が、2019111日、白眉センターにて開催されました。 

藤井崇「死者の希望:ローマ帝政期小アジアにおける死・家族・神」
山崎正幸「食品を科学する夢と現実:より楽しい食の未来へ向けて」 

人はいかに死を迎え、その死はいかに語られるのか?――歴史死生学の立場から、これまで藤井氏は、ギリシア世界における死について考察を行ってきました。資料となるギリシア語墓碑銘には、死者の生年・没年が記録されているだけでなく、場合によっては被埋葬者が死に至った原因やその死に直面した家族の感情が語られます。その表現方法は多岐にわたり、墓に眠る死者を1人称におき、通行人との架空の会話が展開されるような例も見られます。病に対する懸命な治療も空しく臨終の時を迎える光景が生々しく語られたり、幼子の不慮の事故死に対する家族の無念さが劇的とも言える語り口で描写されたりしています。当時は、約半数の人が5歳を待たずに死を迎え、平均寿命も20数年という多死の時代。死に対する感覚が麻痺してもおかしくないと思われるかもしれませんが、資料はそれとは裏腹な側面を伝えています。高齢化を続ける日本も多死社会となり、東日本大震災は多くの犠牲者を出しました。古代と現代を照らし合わせながら、死を目の当たりにする人間の姿について、様々な意見交換が行われました。

4年前に京都大学から当時新設の龍谷大学農学部へ移り、今春初めて卒業生を送り出す立場となった山崎氏は、最近、研究者として、また農学部を支える立場として、今後どういったビジョンをもって活動すべきか考えるといいます。大学時代から44歳の現在に至るまでを大学人としての1循環と捉えれば、次の約20年は2循環目に相当するでしょう。日本と海外におけるこれまでの研究経験を今後の人生にいかに活かすべきか。生命を支える食に関する学問のかたちは、これまでいかなる変遷を重ね、今後どのように発展する可能性があるのか。それらを総括した上で山崎氏が述べたのは、食物アレルギー問題の解決や、食感に関するサイエンスの構築といった、どんな立場の人間をも不公平なく幸せにすることができるサイエンスを展開したいという想いでした。質疑応答に際しては、彼の新たな研究計画に対する真摯な意見、龍谷大学農学部が今後持つべきビジョンに関する辛辣な意見などが激しく入り乱れました。