第10回研究会 報告


秋季大会として第10回研究会が開催されました。

まず、江波氏が「命が創る環境、環境が創る命」というタイトルで、生命がどのように地球の環境を創り、またその環境がどのように生命を創ってきたかについて話題提供されました。太古の昔、原始生物が光合成を「発明」してくれたおかげで、当時の大気中に大量に存在していた二酸化炭素の一部が酸素に置き換わり、その結果、地上に降り注いでいた波長の短い有害な光をカットしてくれる「オゾン層」が生成されました。これにより、生物の一部は海を離れ、地上に進出できるようになりました。これは光合成を行う「命が環境を創った」例です。また様々な活性酸素から我々を守ってくれているアスコルビン酸(ビタミンC)をなぜヒトの祖先は体内で合成しなくなったのかについての議論がありました。ヒトの祖先は気候変動という環境問題に対応するために果実や木の実を持つ植物とともに「共進化」し、その結果、我々に色彩が生まれたという説があります。これは「環境が命を創った」例と言えるかもしれません。また地球の長い歴史上、気候変動を常に駆動してきたのは植物と植物プランクトンの生命活動であるという証拠についても議論しました。このように、光合成を行う生物の偉大さに畏敬の念を覚えるとともに、命 ⇔ 環境の「循環」はずっと続いてきたという重要な事実を再確認しました。最後に、このような生物のシステムがどのように生まれたのかという「生命の起源」の探求の必要性が強調されました。

続いて後藤氏が、「医療技術の費用対効果 政策利用はできるか?」と題して、医療費が高騰する中で、新たな医療技術の費用対効果の分析がどのように政策利用されているかについて日本の現状を交えて話題提供しました。世界各国で、高額な医薬品や医療機器について、社会保険や税で支払っていくかどうか、価格をどうするのかについて試行錯誤をしながら政策的な意思決定を行っています。日本でも、2016年度から試行的に費用対効果の考慮が始まり、現在来年度の診療報酬改定に向けて議論が行われています。現行の診療報酬制度にできるだけ沿いながら、費用対効果や医療技術の倫理的な側面といった新しい要素をどのように考慮して政策決定が行われているかについて、実例を交えて話しました。その中で、研究者の果たすべき役割や本来あるべき姿と現状との乖離について、自然科学、人文社会科学様々な立場から参加者とともに議論を行いました。